日生薬局メディア
コラム
2021 02.19

【薬剤師コラム】処方箋なしで来局された方の話を聞いてみると・・・

こんにちは、日生薬局です。   少し日付が開いてしまいましたが連載企画の薬剤師コラム第3回を掲載したいと思います。 今回もプライバシー保護のため地名や固有名詞等を一部改変しつつ、日生薬局で働く薬剤師の活躍した事例をご紹介します。   今回は入社1年目新人薬剤師が体験した薬を渡すだけではない、これから必要とされる薬剤師像の事例です。   □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□ 店舗:東京都豊島区 日生薬局K店 患者背景:40代 男性 処方箋を持たずに薬局に来局 薬剤師に相談を希望 事例: 来局されたときに医療事務スタッフが処方箋を受付しようとしたところ、処方箋はなく薬剤師に相談したいことがあったため来局したとお話し頂く。そこでお話を聞くため入社1年目の薬剤師に対応を変わり内容を伺った。 うつ病を患っており仕事を続けることが難しく今後どうすればいいのかわからない、良くなりたいという思いはあるが薬に頼りたくないので薬以外の方法はないのか、そのほかプライベートな悩みとその内容は秘密にしてほしい、という内容を相談された。 薬剤師として薬を正しく服用することの大切さと、良くなっていくにつれて薬も減らしていけることを伝えつつ、相手の不安に寄り添って無理に納得させるような話し方を避けた。   数か月後、再度来局され症状が改善に向かい仕事を続けることができていることを報告頂いた。 薬についてはまだ抵抗感はあるものの、服薬が今の状態につながっていることも理解されていた。 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□   この事例では対応が難しいと思われるポイントがいくつかあります。 まずは病状を改善したいが何か方法はないかという相談を薬剤師にされた点です。 当然ながら薬剤師は薬物の専門家ではあるものの、病気の診断や治療を直接行うことはできません。 治療方針に関しては本来であれば医師と相談するべきですが、医師との関係があまり良くないのかな、何か伝えられない理由があるのかな、といったことが心配されます。 そんな中で薬剤師としてできることは服薬の重要性を伝えることですが、その伝え方がまた難しいポイントです。   精神科領域の薬剤についてはいわゆるハイリスク薬が多く、服薬指導の際に注意する点が多いですが、その注意点について説明しすぎると怖くなって服用しなくなる方は少なくありませんし、逆に効果を信用しすぎて過量服用する方もいます。 そして病状や受け取り方は人それぞれなので、相手を見ながら一人ひとりに合った話し方をしていかなければいけません。   またプライベートな悩みや今後どうすればいいのかわからないといった相談を頂くこと自体が困った状況ではないでしょうか。 薬剤師だから、病状が、といったことを抜きにして、そのような相談に乗ることがそもそも一人の人間としてどう話せばいいのか頭を悩ませると思います。   このような状況を前にして、まだまだ経験の浅い1年目ながらしっかりと対応したことはファインプレー以外の何物でもないでしょう。 数か月後にもう一度来局してくださり、改善へ向かっているというお話を頂いたことも、薬剤師として大きなやりがいを感じたと思います。 実際にその薬剤師からも「アドヒアランスの向上に貢献することも大事だが、人によっては話を聞いてくれる人や場所作ることも大切で、地域の中でそんな場所になれたらいい」という話を聞いています。   さて第3回の記事いかがだったでしょうか。 薬剤知識のみではなく相手の話を聞き、考えを伝える総合的なコミュニケーション能力が試される事例だったと思います。 日生薬局では入社1年目にコミュニケーションの専門家によるファーマシューティカルコミュニケーション研修を毎年実施しており、その内容が生きた事例だったのではないでしょうか。   それでは最後まで読んでいただきありがとうございました。 また次回の更新をお待ちください。