日生薬局メディア
コラム
2021 01.04

【薬剤師コラム】睡眠導入剤を吐き気時に服用!?

明けましておめでとうございます、日生薬局です。 本年もどうぞよろしくお願い致します。   新年最初の更新ですが、連載企画の薬剤師コラム第2回を掲載したいと思います。 今回もプライバシー保護のため地名や固有名詞等を一部改変しつつ、日生薬局で働く薬剤師の活躍した事例をご紹介します。   今回は在宅医療の現場で連携するケアマネージャーさんからの相談に乗った結果、患者様の不適切な薬剤服用が発覚した事例です。   □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□ 店舗:東京都千代田区 日生薬局I店 患者背景:90代 女性 I店で在宅訪問薬剤管理実施 認知機能に低下がみられる 寡黙な方   事例: I店の薬剤師が在宅医療にて薬剤管理を担当している。担当のケアマネージャーさんより「ご本人が薬に無頓着でお薬の飲み忘れが多いので、どうにかできないか」という相談を受ける。その相談を受けてからご自宅訪問した際に改めて部屋の中を観察してみると、部屋のあちこちにわかれて薬が保管されている状況が確認できた。普段は寡黙な方であまりお話をされないが、適切な薬剤管理のために時間を取ってヒアリングした結果、薬剤師からもらった薬をその時手が届くところにしまっているためどこに薬があるのか把握していないこと、夜の不眠時用に処方されている睡眠導入剤「ゾルピデム酒石酸塩」を昼寝時や吐き気のある時に服用していることが判明した。   以降、一包化薬については分包紙に日付・服用時点の印字を行い、お薬カレンダーを導入、訪問ごとに薬剤師が飲み忘れがないかをチェックする体制とした。またゾルピデムについては夜の不眠時用の薬であることを改めて説明し、吐き気のある時には別途処方されているドンペリドンを服用するように指導した。   結果として月10回以上あった飲み忘れは1回以下に減少し、薬効に則った適切な頓服薬服用が身についた。 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□ いかがでしたでしょうか。 ケアマネージャーさんからの依頼は薬の飲み忘れを減らしたいというものでしたが、その裏には患者様の服薬への意識の低さがあり、不適切な薬剤服用まで見られました。   今回それを発見解決できたのは在宅医療の現場だったからでしょう。   仮にこれが薬局店舗の窓口だったとしたら、患者様は「ちゃんとお薬飲めていますか?」という薬剤師の問いかけに「きちんと飲めているから問題ないよ」と答えている可能性もあります。 その結果飲み忘れによって治療効果が得られず薬の増量になったり、睡眠導入成分の不適切な摂取によるふらつき・転倒やそれによる骨折等の怪我、薬物依存などを招きかねません。   これを防ぐことができたのは患者様の生活圏へ薬剤師が介入し、その実態を自分の目で見ることのできる在宅医療だからこそであり、在宅医療、介護の現場に薬剤師の介入が求められているのはまさにこの点を期待されているからです。 ただご自宅にお薬をお届けするだけではない、生活の実態を捉えたうえで果たしてそれが処方内容に適っているのか、しっかりと服薬して治療効果をあげているのかを薬剤師自身の目で見て、考えることが求められているのです。   在宅医療は今後重要になってくるとは聞いているけれども、実際には何をすればいいのかイメージが湧かないという薬学生の皆さんはぜひこの事例を参考にしてみてくださいね。   さて、新年初めての記事はいかがでしたでしょうか。 昨年はコロナウイルスの脅威にさらされ続ける一年でしたが、アメリカやイギリスをはじめ、世界各地でワクチン接種が開始するなど希望も見え始めました。 今年はコロナ禍に打ち勝ち、明るい一年になることを心から願います。 皆さんがよい一年を過ごせますように。 本年一年どうぞよろしくお願い致します。